進化する難病ケア(当事者の生きる力を支える制度とは)

講師NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会
            理事 川口有美子

日時:平成17年11月22日(火)
場所:県松阪庁舎6階大会議室

 平成7年に母がALSを発症し、平成8年には気管切開し人工呼吸器の使用を開始しました。私は夫の赴任先であるロンドンから急遽子供たちを連れて帰国し、介護生活に突入しました。最初は妹と交代で、昼間は私、夜間は妹と分担し24時間の介護をしていました。もう子供たちの育児や教育はそっちのけで介護一色の生活でした。
 
 その後、東京都の全身性障害者介護人派遣制度を利用し、1時間8時間の介護人が介入してくれることとなりました。そのころ介護人として吸痰や経管栄養の注入などの医療行為も行ってもらっていました。
 
 しかし、平成12年介護保険制度が施行され、平成15年には支援費制度が施行され、全身性障害者介護人派遣制度がなくなってしまったのです。
介護保険では1時間や1時間30分でヘルパーさんは帰ってしまうし、また吸痰などの医療行為はやってもらえない。
 
 自分たちの生活を維持しようとするためと折角母の介護に慣れたヘルパーさんたちの時給や労働水準を維持するためにも支援費制度の基準該当事業所を立ち上げざるを得なかったのです。
 
 その事業所申請のために区役所に20回以上は通いました。区の職員さんも最初は素人が事業所を立ち上げることに否定的だったのですが、何度も必要性を説明し、区長さんにも直訴しその熱意が伝わり最後は区の協力も得られるようになりました。また立ち上げた事業所に区から他のALS患者さんを助けて欲しいという要請までもらうようになったのです。
 
 東京都ではこのようして自前で事業所を立ち上げた家族が10名近くいらっしゃいます。患者さんが増えるとどんどん自前のヘルパーさんを養成する必要ができてきました。
 
 そこで先輩当事者である橋本操さん(現日本ALS協会会長)に相談し、自前で事業所を立ち上げている人たちで組織する「さくら会」で吸痰のできるヘルパー養成を行うことになったのです。(20時間研修のうち9時間は福祉制度や医療について講義を、11時間は実際の患者さんで実習)この研修は「進化する介護」として専門職、研究者、当事者によるヘルパー研修ということで地元の評判をよび、またファイザー製薬の研究助成も受けることとなりました。
 
 現在、東京だけでなく地方でもできるよう名古屋や松江でも展開中です。
 
 実際ALSの介護は地域格差も大きいです。東京では介護サービス時間(一ヶ月の一人に対する最高時間)722時間に対し栃木では47時間です。
 
 先日、日本ALS協会会長の橋本操氏と衆議院厚生労働委員会に参考人として要望をしてきました。来年、自立支援法が施行されどのように介護環境が変化していくか私たちが出した要望が守られていくのか注意深く見守ってしていく必要があります。


 
 講演会&座談会を終えて
 
 講演終了後も熱心な質疑応答が飛び交いました。川口さんの行動や活動に強いパワーに感銘をうけ、「当事者が声を出して、行動していかなければ世の中は変わっていかない」という言葉が印象的でした。また地域性も感じていらっしゃり、「三重県もどちらかといえばつつましい、奥ゆかしい県民性なのかしら。その地域性に見合った取り組みが必要ですね」とおっしゃっていました。みえalsの会としてもそのようなことを踏まえつつ皆さんと共に思いを声にしていきたいと思いました。
 
 
野村 由里子

als研修会の新聞記事
講演会&座談会の写真2
als研修会の新聞記事
 
講演会&座談会の写真1
 
講演会&座談会の写真2 講演会&座談会の写真3
講演会&座談会の写真2
 
講演会&座談会の写真3
 
 
 
もどる